今年度初出張:岡山県井原市での講演を終えて

2020年度はコロナで始まり、コロナで終わるのだろうか。

自粛が解除されたら、まあ来るだろうなと言われていた第2波の前兆が表れ始めており、東京は再び自粛要請が出るのかどうか、というハナシもちらほら。

個人的には、コロナ前から自宅で仕事をする時間が増えており、それほど違和感なくワークシフトが完了しているわけですが、とはいえ、講演やワークショップをオンラインでOKと言ってくれる自治体もまだまだ少ないわけで、今回のように対策を重ねつつ現地にお伺いするということもあるわけです。

とはいえ、今回が2020年度初出張。

お声がけいただいたのは、岡山県井原市。

岡山県と広島県の境目に位置する人口約4万人ほどの自治体です。

昨年度、県下の設置済みの自治体の意見交換の会議が開かれた際、私が講演とファシリテーションでお招きいただき、その場にオブザーブ参加していた井原市の青少年センターの担当者の方から講演の依頼をいただいたという経緯。

岡山県下の自治体における子ども・若者支援地域協議会は、最初期から取り組んでいる勝央町のほか、玉野市、津山市などが設置している状況です。

岡山県の担当は県民生活部男女共同参画青少年課で、ここ数年、県下の自治体の取り組みを強力にサポートしていることもあり、ようやく少しずつですが、市町村レベルでの取り組みの必要性が認識され始めたところ、という感じです。

コロナのこともあるため、当初3時間で講演+ワークショップという予定だったのを、講演のみに切りかえ、若者問題の変容と、それを受けて支援体制をどのように再構築していくべきか、というハナシをさせていただきました。

事前のやり取りで、井原市の子ども・若者支援の取組は社会福祉協議会を核に、各支援者が既にある程度連携して進めているという話も聞いていましたが、実際に講演で各機関の連携が必要、というクダリを説明した時にも、聞き手に「ええー」みたいな違和感はなく、やはり既に連携実績があるところなので受け入れられやすい趣旨なのかもしれない、と感じました。

井原市のように比較的人口規模の小さい自治体の方が、関係機関同士の距離感も近く、連携しやすい、という背景もあるのかもしれません。

勝央町のように、息の長いお手伝いをさせていただければ。

次回は特産品のデニム商品を買い込みたいところでもあります。

「マイナスからゼロへの支援」と「ゼロからプラスへの支援」

今年は愛知県、徳島県に加え、岡山県のSVを拝命している田中です。本日は岡山県下の市町村の担当者の方々向けに、子ども若者支援地域協議会の説明をするということで、県北地域の中核地域である津山市にお邪魔してきました。

二か月くらい前に津山市の隣の勝央町に同じくSVとしてお邪魔したときは、横浜から津山まで深夜バスを使って早朝6時に到着するという、前入りするにも程があるだろ!という時間に来たのですが、今回は都合が合わず、飛行機で岡山県入り。

とはいえ、10時には津山市に到着し、午前中いっぱい津山城に登城して本丸曲輪で一人PCを開いて仕事をしたり、観光センターのレンタサイクルを借りてB級グルメで有名な橋野食堂でホルモン焼うどんを食べたりしてから会場にレンタサイクルでそのまま乗り付けてるという、もう県北エリア10回以上来てるので滞在の仕方も徐々にこなれてきた感じがします(笑)

今日の会の出席者は、県の担当者の方々、県北エリアの自治体の方々の他、内閣府の担当の方と、臨床心理士で内閣府の委員もお勤めの「コラボオフィス目黒」の植山先生主宰もご参加いただいての豪華なラインナップ。

内閣府からは政策的な動向とマクロ情報の提供、私からは各地の協議会の設置・運営状況のご紹介と設置のポイントの解説をしたうえで、植山先生からはモデルケースを利用したケース検討の練習を

県北地域では唯一協議会を設置している勝央町をはじめ、皆さん自地域で同様の相談があった場合にどのように対応していくかをご検討されていました。

検討された内容の発言を聞いていると、協議会を設置していない地域と設置済みの地域・民間組織(NPOやボランティア組織)とでケース検討のアプローチの仕方が異なっているようだったのが印象的でした。

未設置地域ではどちらかというと、「当事者の何が問題なのか」という点から支援を組み立てようとしているのに対して、設置済みの地域やNPOは「当事者あるいはその親の目指すゴールはどこにあるのか」ということにフォーカスしていました。

もっとも、この指摘の違いは、設置・未設置の違いというよりは、参加された方の所属によるのかもしれません。今回でいえば、どちらかというと福祉系の支援員の方が前者的な目線で、相談センターの相談員の方やNPOの方は後者という分けの方がしっくりくるような気もします。

私自身は、よく

当時者が抱えている問題を特定して、それを解消するような支援を「マイナスからゼロに引っ張り上げていく支援」

「自分なりの自立に向けてのゴール設定ができて、それに向かっていく過程をサポートするような支援は「ゼロからプラスにもっていく支援」

と表現しています。

この二つの支援はどちらがベターか、という話ではなく、どちらの視点も重要ということなのは言うまでもありません。

難しいのは、両タイプの支援をケースに応じてどのように配列させていくのがいいのか、というところにあると思っています。

ケースによっては、最初にどうありたいか、というところを一緒に描いて、それに向かって目下の問題をクリアしていくというアプローチがよいのかもしれない。

また別のケースでは、まずは抱えている問題をじっくり解きほぐしてあげるのがよいのかもしれない。

ケースによって「ー→0」「0→+」の支援をどのタイミングでどのように示していくのかベターかという判断は異なります。それを考えるのが総合相談センターであり、協議会の検討の場でもあります。

また、そういった柔軟な支援を構築するためには、地域における支援リソースが多様であること、相互につながりうるだけの関係ができていることが重要ということもいえると思います。

ケース検討の最後に、勝央町で長年相談窓口の相談員をやられている方が、支援のスタンスについて

「焦らずに、長期的な対応をひとつところで抱えるのではなく、たくさんの関係機関が一緒に支援について考えていくことが重要」

と仰っておられましたが、現場のご経験としても、様々な機関があることで示せる支援の可能性の広さを意識されてのご発言だったのではないかと思うわけです。

地域において

「-→0」「0→+」の支援を担保できていること

両タイプの支援の多様はどのくらいか

支援リソース同士のつながりはどうか

そういった視点を持っておくことが、地域で支援できることを考えていく上で重要なのではないでしょうか。