愛知県知多市の地域で支える就労支援

昨日は愛知県知多市が開催する「若者就労支援フォーラム2019」にお招きいただき、各地の若者就労支援の取り組みについて、というタイトルで講演の機会をいただきました。

知多市には「ちた子ども若者支援ネット」という、行政機関やNPO、民間企業が参加する中間的就労を支援するネットワーク組織があります。社会福祉協議会がネットワークの事務局機能を担っているということでしたが、この社会福祉協議会のスタッフの方々が素晴らしい方だったのが印象に残っています。

福岡県北九州市の総合相談センターのYELLや、東京都文京区のフミコム、そして知多市の子若ネットといった活発に活動を続けているネットワークの共通の特徴としては、ハブとしての社協がしっかりしている、というところですね。
社会福祉協議会の役割や活動についてはこちら↓

さて、知多市の取り組みは前々から大変興味深く拝見しており、いつか現地でその活動を支えている方々にお会いしたいと思っていたところに、今回のようなお誘いをいただいたのは非常にありがたかったですね。

知多市では、中間的就労の促進ということで、このネットワークの活動が非常に特徴的なのです。

何が特徴的かというと、就労体験の場を、その地域で事業をされているさまざまな企業と連携することで提供しているというところにあります。

ちた子若ネットでは、平成28年に、15歳から39歳までのニート、ひきこもり状態にあり、障害福祉サービスを利用していない方を対象として、中間就労準備支援、企業開拓、人材発掘・育成を試験的に実施しています。

同時に、知多市商工会を通じて、市内事業者約1000社を対象にして、「若者の中間就労に関するアンケート調査」を実施、ヒアリングを経て約30社から中間就労体験の場を提供してもよい、という事業協力を取り付けています(ちなみに、平成30年時点では48社に拡大)

その上で、22歳から38歳までの男女8名が、製造業など6事業所で就労を体験し、うち2名が市内事業所に正社員として採用されたということです。

非常に参考になるのは、上記の調査および体験就労支援のコスト負担を、地元のライオンズクラブやロータリークラブの寄付によって賄っているということです。

こういった活動を展開する場合、行政による助成金や事業受託によって賄おうとするケースは非常に多いのですが、知多子若ネットではその道を選ばず、地元の他のネットワーク組織にアプローチしたという意思決定をしている。

資金調達ルートを多様化するとともに、自ネットワークの認知度向上やプレイヤーの巻き込みといった様々な面で、このトライはいい影響を及ぼしたのではないかと思います。

知多市は大都市である名古屋から電車で30分ほど。多くの若者が名古屋に働きに行く中で、中間的就労の場を設けて、就労を希望する若者と地元企業をつなげる接点を作ることは、地域福祉という観点だけでなく、まちづくり・地域経営という観点からも重要なのではないかと思います。

一方で、課題として挙げられていたのは、集客(=参加者を増やすこと)と、参画企業との関係維持というところにあるということでした。

岡山県勝央町でも同様の取り組みを進められていますが、こちらも参加者がいないということが課題になっています。

良い仕組みを作っても、それが使われなければ意味がありません。
広報や情報発信のテコ入れ、あるいは利用可能なターゲットの拡大といったところが正攻法的な打ち手として考えられるのではないでしょうか。

また、参画企業の関係構築としては、年1回程度、活動報告を訪問して行ったり、あるいは、今の若者の就労に関する意識や考え方を伝えるといったことも有効かもしれません。企業にとって、どのような会社であることが、若者にとって魅力的に映るのかは、なかなかノウハウの蓄積がない分野のひとつです。

現場で若者と接点を持っているからこそ持てる気づきや学びを子若ネットから提供することができれば、企業が参画するインセンティブになりうるのではないでしょうか。

社会福祉法人という民間事業者としての活動の幅広さと柔軟性を活かして、今後の活動展開にまい進していけるとよいのではないかと思います。

Challenged(挑戦する機会に直面する人)というフレームを持つことの重要さ

困難を抱える人の支援の現場に身を置く一方で、若い人の起業を支援する立場で働いていると、両者の本質的な違いがそんなに大きくないのではないか、と思うことがあります。

むしろ、彼らをこのような状況に分けたのは、彼らをとりまく社会の側にあるような気がするんですよね。

障害者支援もそう。

障害を持った方々が、障害者として捉えられるのは、社会が彼らの抱える障害が他の人と同じような生活を送る上で致命的なデザインになっているからなのではないかと思います。

だから、社会が変容すれば障害者が障害者ではなくなる可能性もあるわけです。

障害を持つ人たちにITスキルを習得してもらい、手に職をつけるための支援をしているこの組織の取り組みなどはまさにそれかと。

Challenged (挑戦する機会に直面する人)という呼称の前では障害者と呼ばれる人もそうでない人も関係なく、みな挑戦する人。

そういう認識で社会に生きる多様な人を捉える新しいフレームがもっと普及しても良いのではないかと思います

ニートが管理職になる会社 デジタルハーツ

昨日の研修会で参加者の方からいただいた質問のひとつに「ニートでも職につけるのか?」というものがありました。

結論からいうと、全然就職できます。

元ひきこもりの自分でも就職できてますし、周りにもニート状態から学校に戻ったり、就職した人はいくらでもいます。

会社レベルでも最近は発達障害を持っている人や、元ニート・ひきこもり状態にあった人を積極的に雇用しているところは結構出てきました。

中でも有名な会社を上げるとすれば、ゲームのデバッグ、特にバグ(不具合)の発見を行っているデジタルハーツ社がありますね。

詳細は、ひきこもりやニートの方についての篤い記事を精力的に描き続けておられる池上正樹さんの記事をご参照いただければ、よりご理解いただけるのではないかと思います。

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同じ状態なのに、一方では自室に閉じこもらざるを得ない。

もう一方では、頼れる戦力として位置づけられ、本人もその期待に応えて活躍している

こういう会社の取り組みを拝見していると、結局のところ、ニートやひきこもり状態にある人を、そもそもその状態に追いやっているのは本人ではなく、周囲の環境や、当事者を取り巻く社会の側にあるのではないかと改めて思います。

ニート・ひきこもりという”状態”を見て、社会に出ていくのが難しいだろうな、という判断をまずは留保して

当事者自身を理解し、それをベースにやれることを一緒に見つけていく、という姿勢が支援者側のマインドセットとして非常に重要になっていくのではないでしょうか。

また、やれることの引き出しは、支援者一人では限りがあるので、そういったときに考えられるチームや場があれば、より可能性が広がるのではないかと思います。

支援の輪を広げるNPO法人PIECESの挑戦

先月行われた内閣府の青少年問題調査研究会でプレゼンした4つの総合相談センターの担当者の方々が、地域の生活者との連携という点に注目しているのが印象的でした。

子ども・若者を支援していく上で、専門性を持った支援機関の存在はとても重要ですが、支援機関だけでは地域内で困難に直面する子ども・若者を見つけて支援し切ることは難しいのも現実です。当事者と専門家とのギャップを埋めるためには、非専門家―地域の生活者―の参加と協力が不可欠だと感じます。

足立区と豊島区をメインに、子ども・若者支援に取り組むNPO法人PIECESも、地域の生活者との連携を活用している団体だと思ってます。

あ、なんでPIECESの話がいきなり出てきたのか、といいますと、副代表の荒井さんと打ち合わせのため、オフィス初訪問してきたのでした。 “支援の輪を広げるNPO法人PIECESの挑戦” の続きを読む