子ども・若者の個別相談会@石垣市

かなり前のことですが、石垣市の子ども・若者地域支援協議会の立ち上げのお手伝いをして以来、お邪魔する機会がなかなかないのですが、石垣市の子若支援の取り組みとして、個別相談会を実施しているようです。

相談に乗ってくれるのは沖縄県の相談センターであるSoraeの松本大進さん。以前インタビューさせていただいたことがあるのですが、とても熱心な方です。

当時者やそのご家族の方が相談できるチャネルがたくさんあるのはよいことだと思っています。当事者と支援者も人間。そこには相性もありますからね。

相談者からすると、困難に直面したときにどのような支援を受けられるのか、複雑だし広汎だしよくわからない、ということはままあることなので、こういった相談会の場に、各種支援領域の担当者がいらっしゃるとより実のある場になるのではないでしょうか。

生活保護と持ち家

昨日の研修会の参加者から、「持ち家があると、生活保護を受けられないのではないか」という質問をいただきました。

結論から言うと、そんなことはありません。

大元締めの厚労省の資料にはこんな感じで言及があります。

基本的な考え方として、売却が原則。

被保護世帯の居住の用に供される家屋及びそれに付属する土地については、保有を容認し、保護を適用。

ただし、処分価値が所有価値に比して著しく大きいと認められる場合には、売却等による資産の活用をした上で、保護の要否を判断

一つ目の項目を見たら「やっぱり売却か・・・」と読めるわけですが、二つ目の項目をよく読んでみると、住むために必要なら保有してもよい、ということなんですね。

ただ、売却したら高額で売れて資産形成できるなら売却してもらうよ、ということのようです。ざっくり言うと。

さすがに生活保護の制度も鬼ではないということですね。

引きこもり状態が長期化した場合、少しずつ支援の方法は減っていきます。

その最後の砦として生活保護制度があるわけですが、その内容は複雑で経時的に変容する可能性もあり、担当の方でない限りすべてを把握しておくことは困難だと思います。

そのようなときに、たとえば子ども・若者支援地域協議会で、生活保護制度の理解を高めるためのレクチャーを担当者にお願いしてもらったり、ケースを扱う際に生活保護受給の可能性について意見をもらうといったことが、制度理解や連携促進のためには重要なのではないでしょうか。

時に風当たりの強い生活保護制度ですが、この制度が必要な家族は確実に存在します。チーム全体で理解度を高め、必要としている人に制度を適用していきたいですね。

子ども・若者支援地域協議会 集客のコツは組織理解にあり

昨日は、愛知県下の自治体担当者の方々向けの研修会にコーディネーターとして参加してきました。

先週の岡崎に引き続き、子ども・若者支援地域協議会を設置していない自治体の担当者の方向けの研修会で、尾張地域の約20の自治体が出席されてました。

しかし、愛知県の自治体って結構多いんですね。調べてみたら県下の市町村数は54(2018年4月1日時点)で、47都道府県の中で上から6番目に多いらしい。

地図とか見ても、名古屋市の周りに村とか町といった名称の自治体が結構ある。コンビナートや有力企業が立地しているので合併の必要性がないのでしょう。

なので、こういった研修会に参加する自治体も愛知県は非常に多いのですが、一般的に、協議会未設置地域の自治体向けの研修会は集客に非常にてこずります。

なんせどの地域も問題意識が無いか、自分の課が出ていくと、なし崩し的にそこが担当課ということになってしまうリスクがあるので、担当者の方として二の足を踏んでしまうことがままあるんですよね。

愛知県の場合は、県から、県下に複数ある県民センター・県民事務所の方から各自治体にプッシュしていただいたこともあり、多くの方にお集まりいただけたとのことでした。

県民センターの担当の方は元教員OBで教育委員会にもいらっしゃった方が多いとのことで、担当課にも声をかけやすかったということがあるようです。そのあたりの関係性を活用して人を呼ぶあたりに、技を感じますねー。

人が参加するのはつまるところ

自分自身あるいは所属している組織に参加するインセンティブがあるか

参加しないと後で困ったことになるか

のどちらかです。今回は後者ということになるでしょうか。

その組織の力学を理解した上でどうやって来てもらうか。

そして来てもらったからにはしっかり気づきや学びといった”Something New”を持って帰ってもらえるか。

そういったことを考えながら参加者を募ることが重要なのではないでしょうか。

NPOと行政のかみ合わなさの原因は何かを考える

子ども・若者支援の領域では、行政とNPOのような民間組織が連携していくことが重要なわけですが、これが言うは易し行うは難しということが多い。

一番多いのは、NPOから見て行政サービスのカバレッジが不十分でターゲットにドンピシャのサービスが提供できない、というもの。

NPOの方は自分たちの目の前にいる当事者をサポートするために日々貢献してらっしゃる。

それなのに、行政の対応やアクションは、そもそも誰を相手にしているのかも曖昧だし、アクションもぬるいじゃないかという指摘を聞くことも多いんですよね。

どちらも、地域の当事者を支えるために考えているという点では一緒なのに、なぜこのようなコンフリクト(衝突)が生まれているのだろうか?

激しさのレベルは様々ですが、そんな両者の衝突の場面に居合わせる度、その帰りの電車の中で考えてました。

そんなときに、最近、元厚労省事務次官の村木厚子さんの『日本型組織の病を考える』という本を読んだんですね。

その中で村木さんが書かれている公務員の仕事についての表現を読んで、なんかわかったきがしたんです。その部分を要約すると、こんな感じになるかな。

「公務員の仕事というのは、提供するサービスの充実を考えなければいけない一方で、国民の負担を重くしないようなバランスを取らないといけない。そうすると、結果的に出来上がるのは全員が満足するものにはならない。でも、なるべく多くの人が受け入れてくれる現実的な制度をつくらなければならない。」

僕は、NPOと行政の仕事の違いは、ここんとこに端を発してるような気がするんですよね。

行政が子ども・若者支援の施策を考えようとするときに、ある程度施策の対象者は絞り込まれている。でも、その財源は広く市民・国民が負担する税金で賄われている。

また、特定の団体向けに設える制度であってはならず、汎用性のある制度設計であることが求められる。

そうなってくると、行政が打ち出すアクションは誰もが100点満点をつけられないサービスになることが多くなるわけです。

サービス利用者や施策のパートナーにとっては十分に満足のいく内容ではないという印象を持たれることも当然あるでしょう。でも、それは行政サービスという性質上、ある意味宿命といえる性質なのではないかなと思うんですよね。

もちろん、行政の人は、誰もが100点といわず、高得点をつけてくれるような施策の可能性を追求し続けなければいけない。

でも、NPOや生活者の側も、行政サービスがそもそもそういう性質を帯びていることを理解することが重要なのではないかと思うわけです。

ほら、子ども・若者やその家族といった当事者を支援するときには、みなさん相手の理解が重要って力説してるじゃないですか。

それと一緒で、事業のパートナーである行政に対しても、その視点を遺憾なく発揮すればよくない?と思うんですよね。

カスタマーだけでなく、事業パートナーに対しても、まずは理解ファーストでいきましょ。

そうすれば不要なコンフリクトもなく、提携できるところと難しいところが明白になるし、できなければ他の方法で資金調達と事業展開しなきゃな、って思考になるのではないかと思うのです。

ミッションは同じだけど違うプレイヤーと協業するときの基本スタンスはこうでありたいですよね。

刈谷市で子ども・若者支援地域フォーラムが開催

愛知県刈谷市で子若支援の関係者や当事者およびその家族が集まって情報交換をしたりつながったりすることを目的としたフォーラムが開催されたみたいですね。

私も過去に、子若協議会を設置した自治体の担当者の方々と一緒に同様のフォーラムを開催してきましたが、気軽に関係者同士がつながれる場を設けることは、子若支援のネットワークを構築していく上でかなり重要なことだと思っています。

刈谷市のフォーラムでは、当事者の方の参加もOKとしている点で、サービス利用者側のニーズや感想を直接支援サイドが把握する良い機会になったのではないでしょうか。

子若協議会の定期的なイベントとして、年1回開催くらいの頻度でやってもよいのではないでしょうか。

愛知県SVその2

北九州市への出張、国立市での講演+ワークショップに引き続き、8月最終日、愛知県に出張です。

今年度は愛知県から依頼をいただいて、子ども・若者問題についての理解向上や、子ども・若者支援地域協議会の設置促進をお手伝いするSuperViseの仕事しています。

本日はその一環で、主に協議会未設置の地域向けの研修会のサポートするお仕事。

岡崎市にある愛知県西三河総合庁舎へお邪魔して、メインの講演者であるNPO法人いまからの仲田代表理事の後を引き継いでコーディネーター的に場を切り盛りしてきました。

ともすれば現場で当事者やそのご家族を支援しているNPOと、事務局的な立ち回りが多い担当課とでは、見ている景色が違うので、うまくいえば双方の視点が提供されて建設的な場になるのですが、なかなかどうしてそうはいかないのが人の情というもの。

そういうときにコーディネーター的な立場で議論を良い方向にもっていく存在が大事になってきます。

愛知県の担当の方と、今年度の活動内容を考えるときに、単純にNPOの方に来ていただくよりも、その話の内容を自治体の方向けに解釈したり、相互理解を深めるために自分を活用してはどうかと提案して、それをお聞き入れいただいたので、責任はかなり重大。結構緊張してました。

が、結果的には場は荒れることなく、今回の目的である、支援対象である当事者の実情を知るという点については、参加者の皆さんに満足行ける内容で進行ができたように思います。

当事者を支援するとき、当事者が気持ちよくジョインできる「場」を創ることは非常に重要ですが、支援者同士が進化していくためにも重要だったりします。

愛知県の研修会は、設置済み地域向けと未設置地域向けにそれぞれサポートメニューが用意されており、今年度はあと4~5回くらいお手伝いするわけですが、今回のような場をまた創っていきたいなと思う次第です。

「国立市子ども・若者の自立を支える連続セミナー」に参加してきました

月1回、全3回の連続講座の1回目で講演プラスワークショップをしてきました。

テーマは

「多様な支え手が繋ぐひきこもり支援の可能性」

ということで、行政や民間、市民の方それぞれの立場でできる支援って何なのか、ということを一緒に考えられる場を創ることを目標にお手伝いしてきました。

市のご担当の皆様がこれまた良いチームでよい雰囲気の中で終えられたのはとてもよかったです。子ども家庭部・児童青少年課の皆様お世話になりました!

ブリコラージュとしての子ども・若者支援

子ども・若者支援協議会はエンジニアリングというよりもブリコラージュに近いと思う

ブリコラージュは、文化人類学者のレヴィ=ストロースが広めた概念で、「寄せ集めて自分で作る」「ものを自分で修繕する」こと。「器用仕事」とも訳される。

また、ブリコラージュは明確な設計図やコンセプト、実現に必要な十全な材料を揃えた上で目的のものをつくりあげる「エンジニアリング」とは真逆の考え方として位置付けられる考え方だ。

子ども・若者を支援するための仕組み作りは、ブリコラージュかエンジニアリングか

この二択で選べと言われれば、私はブリコラージュという答えを選ぶだろう。

というのも、子ども・若者支援には、画一的な設計図やコンセプトが(まだ)無いからだ。 “ブリコラージュとしての子ども・若者支援” の続きを読む

豊島区が子ども・若者総合相談窓口「アシスとしま」を開設

豊島区で子ども・若者向けの総合相談窓口が開設されたそうです。

相談利用が可能なのは区内在住の概ね39歳までの若者とその家族。

取り扱う態様としては、日常生活習慣、学校生活、進路、ひきこもり、家庭内暴力、非行等の課題。

庁内設置という点では23区初。

複数の支援機関が連携することが求められる若者支援において、庁内に窓口があることは、ユーザーである区民の利便性向上につながるメリットがあります。

また、豊島区の支援の特徴としては、相談窓口で「待ちの支援」を展開するのみならず、「子ども若者支援ワーカー」を設置して当事者へのアウトリーチや支援者との関係構築を図っていくとしている点が挙げられる。

ただ窓口を設置しても、広報力不足などで利用者が増えない事例もあるので、こういうプッシュ型の支援との組み合わせは非常に重要かつ効果的。

ビュートゾルフの地域コーチ的な人が、子ども・若者支援地域協議会の進化には必要だよね、という話

前エントリーで紹介した、オランダの地域医療サービス事業者のビュートゾルフ

同社がオランダの地域医療に従事する看護師の3分の2を雇用するまでに発展できたのは、現場の看護師チームの裁量権の最大化と、それを実現するための仕組みにあると同社の取組みを紹介した「ティール組織」では紹介しています。

この「看護師チームの裁量権を最大化するための仕組み」の中で、「地域コーチ」という各チームを支援する人材の存在が紹介されています。

この地域コーチ、チームの上司でもマネージャーでもありません。

“ビュートゾルフの地域コーチ的な人が、子ども・若者支援地域協議会の進化には必要だよね、という話” の続きを読む