政治家とヒーロー

今日は知り合いの方の御紹介で、東京都議会議員の小松大祐議員にお会いしてきました。

小松議員はご自身のウェブサイトの制作の一番上に教育というテーマを掲げられている通り、子どもの教育や環境についての問題意識を強くお持ちでした。

育て上げネットの少年院との協働事業を紹介すると、出院後のサポートの重要性や、入院前と異なる環境で経験を積む事の重要性をずばりと指摘されるあたりが流石だなという感じでした。

コミュニケーションの中で「仮説」という言葉が飛び出してきたり、子育て政策と少子化対策の費用対効果についての問題意識を持っておられたりと、随所に元リクルート出身らしい切れ味の鋭い事業マインドが感じられて、限られた時間ではありましたが、非常に濃い時間をご一緒させていただくことができました。

その後、場所を移して元オリンピック選手の成田童夢さんとランチ。

今は様々なところで講演や教室をされている成田さんですが、実は過去に部屋からでられなくなった経験もお餅という話をうかがって驚きました。

いや、完全にイメージですけど、オリンピック選手に選ばれる人って、メンタルも強靭なものだというのがあったんですが、実際はそうじゃない人もいるんだなあ、というのが新鮮でした。

よくよく話を伺うと、脚光が当たっている時と、社会の期待から外れた状態になった時とで環境が激変してしまい、時に、アスリートの方ですら耐えられないギャップや風当たりに直面することも多いそうで、「確かにそうだよね」という納得感もありました。

こういう話をうかがっていると、本当に誰だってひきこもり状態になってしまうこともあるし、そういう場合に誰かが支えてあげることで、その後の人生は浮きも沈みもするもんなんだなと感じました。

意外に身近なところにある「ひきこもり状態(の人)」なのだから、社会として支え、応援してあげないと、ほぼ確実に対応が追いつかないということでもあるのだと思います。

勝央町にて。

今日は岡山県北部の人口11,000人の町、勝央町での今年度最後の会議でした。

勝央町は子ども・若者支援の取組にかなり初期から取り組んでいる地域です。
多くの地域が、支援の仕組みを立ち上げたものの、その後失速していく中で、勝央町は、様々な試行錯誤を重ねながらも、その経験をベースに地域独自の取組を創り上げてきた、非常にレアな地域でもあります。

その背景には、悩みを抱えてやってきた若者を応援するために、やれることはやる、今やれないことであってもやれるようにする、という粘り強く適応的なスタイルがあります。

多くの地域が
「予算がないから」
「人がいないから」
「やったことないから」
という色々な理由でやってこなかった取組を、工夫して、毎年少しずつ増やしていった勝央町。

今日の振り返りでは、それらの取組がうまくかみ合って、応援していた人たちが、彼らのペースで歩んでいくお話をたくさん聞くことができました。
(ここだけの話、お話をうかがいながら目頭が熱くなることが何度かありました)

目の前にいるその人にフォーカスし、彼らが本当に求めているものを提供する。その試行錯誤の過程で得られた学びを次の活動に反映していく。

領域は違えど、そこには社会に新しい価値をもたらすために必要な活動があります。
その活動は、世界を変えないかもしれないけれど、ひとりの若者にとっての世界が変わるための活動にも素晴らしい価値があるのだと個人的には思います。

そういう活動が岡山県の勝央町という場所で起きているのがとても興味深く、また、そういう活動に長く関わらせてもらっていることが非常にありがたくもあります。

「子ども・若者支援フォーラムinあいち」開催しました

ここ数年、スーパーバイズを拝命している愛知県で二年がかりで企画してきた「子ども・若者支援フォーラムinあいち」が1月18日に開催され、多くの方の御協力と御参加のおかがで、無事に終わりました。

今回は、13時スタートの18時終了と、時間で見ると結構長丁場なのですが、コンテンツは盛沢山で、時間も空気も足りない半日となりました。

まず、札幌市若者支援総合センター の松田さん、育て上げネットの井村さん、草の根支え合いプロジェクトの渡辺さん、東三河セーフティネットの金田さん、北九州市YELLの村上さんという錚々たるメンバーによる「非専門家や地域の生活者を巻き込んだ支援」についてのパネルディスカッション

次に、愛知県内で特に要望の多かった「アウトリーチ(訪問支援)」と「居場所」というテーマで分科会を並行開催。
アウトリーチは井村さんと渡辺さん、居場所は村上さんと金田さんという構成で対談が始まり、続いて、参加者と登壇者が一緒になったワークショップを実施。

さらには参加者同士の交流会があり、その後に居酒屋になだれ込んでの懇親会があり、最後はフォーラム常連メンバーがAirbnbに宿泊して夜遅くまでお互いの近況を語り合うという超長丁場な一日でした。

このフォーラムは今回で6回目、もともとは、内閣府の「子ども・若者支援地域協議会」の立ち上げに関わった全国の行政職員の方々(と当時の事務局業務を受託していた私のような会社員)のOB会的な集まりとして始まったのですが

「どうせ集まるのなれば、集まった地域の子ども・若者支援関係の方々と交流できたらいいのではないか」

というアイデアから徐々に規模やコンテンツが充実してきた草の根的な活動だったりします。今回は愛知県主催という形で、100人もの参加者が昼食後の眠い時間に四半日もの時間を熱狂的な雰囲気で終えることができ、何だか隔世の感があります。

来年はどこでやるのか。なんとなーく候補地は決まっているのですが、確定ではないので伏せますが、さらに建設的な場を創っていきたいところです。

新潟少年学院スタディツアー(2回目)体験記その一

育て上げネットが企画する少年院のスタディツアー
先月の愛媛県松山学園、香川県丸亀少女の家に続き、今回は新潟県長岡市にある新潟少年学院に7月17日に行ってきました

ちなみに新潟少年学院への訪問はこれで2回目
上越新幹線の長岡駅から車で15分ほどの所にあります。

前回のスタディツアーの参加者は確か10名ちょっとだったかな。ちなみに今回の参加者は40名くらいの大所帯。
参加者のバックグラウンドも本当に多様で、NPO、民間企業、法務省など色々。
社会的な関心の高さがうかがえます。

平成24年に施設更新を迎えたため、非常にきれいな施設に到着後、2階の会議室に通していただき、馬場院長以下、法務教官の皆様に施設概要や少年院に送致されてくる少年たちを取り巻く情報についてご説明いただきました。

このプレゼンテーション、随所随所でプレゼンターが院長から統括官、次長へと変わりながら、担当者の視点でわかりやすく説明していただき、チームプレー感半端ない仕上がりでビビりました。
休憩時間中にその感動を馬場院長に御伝えしたところ、院長なりの深遠な考えがあってこのような形式にしたとのこと。
院長としての職員の方々への愛とマネジメント意識の高さを感じました。

また、説明いただく途中、随所で参加者から頻繁に質問の手が挙がっていたのが印象的でした。

さて、肝心の説明は、少年院の概要から、入院している少年の状況から始まりました。現在新潟少年学院では、比較的高年齢の未成年が約50名ほど生活しているとのことです。

出所することになった原因としては、財産犯が半分くらい。
また、近年の特徴としては、性犯が増加傾向(H30年でいえば11%、例年は3%程度)にあること、そして、暴走行為由来のケースが顕著に減少している事が挙げられるということでした。

暴走族の話では、新潟少年学院には、過去に暴走族の総長も入院したことがあるそうで、総長になるくらいなので、さぞ筋金入りの少年かと思いきや、なった理由は「じゃんけんでまけたから」「先輩に押し付けられた」という理由だったというリアルなエピソードもご紹介いただきました。こういう笑いのエピソードが準備されてるあたり、相当ネタの研鑽があったのではないかと推察されます・・・w

1年弱の期間を少年院で過ごした後の帰住先は両親および親族のところがほとんど。
保護施設に入る少年は全体の5%だそうです。
保護施設では、両親がいなかったり、両親が引き受けを拒否する少年を受け入れることができます。
しかしながら、保護施設は、刑務所出所者も受け入れている関係もあり、スムーズに一か所で決まるとういことは稀だそうです。
また、誰でもOKというわけではない(薬物や性非行が入っていると受け入れが困難になるという現実もある)ようです。

少年院を出院した後について、親元に帰れていいじゃないかという話も出ますが、実際には両親の元に帰るのが本当にいいのか、という葛藤が生じる場合もあるようです。
それは、「地元に帰る=非行していた環境に戻る」ことを意味するケースが少なくないからだそうです。
少年につらくあたってしまう両親の元で生活したり、悪友のネットワークが広がる地域に戻ることで、せっかく少年院で培われた前向きな気持ちが入院前に戻ってしまうということもあるようで、帰住先がスムーズに決まることが、必ずしも更生につながるわけではないようです。

こういった話をうかがう中で、少年院を外から眺める目線と、現場から見る目線とでは、見える景色がやはり違うということを実感しました。
少年院法改正以降、「開かれた少年院」というスローガンのもと、少年院では、施設の透明性を高め、より地域や外部事業者との連携を強化していこうとしています。
その一方で、地域や民間事業者の側も、何か協働できることがあるのではないか、という姿勢で少年院と関わりを持とうとしています。

とはいえ、まだ連携の在り方を模索する活動は始まったばかりですし、外部事業者がどのように関わっていけるのか、少数の先行事例があるほかは、試行錯誤の時期が必要なのかな、というのが実感です。

さて、施設についての紹介をいただいた後は、少年院施設の見学もさせていただきました。
今回はValueBooks社の本の清掃作業の見学と体験をさせてもらったのが特に印象に残りました。個人的には、本の清掃作業で、「あ、それはこういうふうにやるのです」とツッコミを少年からいただいたのがグッときました。

体験と並行して、体育館でVB社の社員の方が少年たちから質問を受けているところも拝見することができました。
その場で少年たちからたくさんの質問の手が挙がっていたのが、歯に衣着せぬ言い方をすれば、意外でした。正直なところ、普通の学校にいる子たちよりもたくさんの手が挙がっていたように思います。

「本を読む事でどのように成長できますか?」

「自分の好きなことで働くというのはどのような感じですか?」

と質問する少年の質問からは、彼らの中にある少年本来のまなざしが込められているような気がしました。
それに対するVB社の社員の方の受けごたえにも真剣に聞き入っている姿を後ろから見て、ちょっとえも言えぬ感情が込み上がってきました。

こういうシーンを目にするにつけ、少年院で生活をする彼等と、施設の外で生活する少年の本質的な違いって何なのだろう、と改めて強く感じます。

子どもにとって自分の親と生まれ育った環境は選べない。
所与に与えられるそれらの要素によって、彼等のその後の生き方は大きく分岐していくのが現実です。

それを自己責任とはとても言えない気がするんですよね。
社会として、全ての少年に等しく成長する機会、自立的に社会で生活していくための環境を用意することは社会の責任なのではないかと思うわけです。

そのためにできることはたくさんあるけれど、少年院という施設に関わったご縁を持ったからには、少年院で生活する少年、その少年たちを見守る職員の方々の支えになるような活動をしたいと思います。

以下、説明の時に交わされた質問と回答内容のラフメモ

※質疑応答の内容をその場で打ち込んでいるので誤字脱字が多いのはご容赦ください。あと、言っている言葉をそのまま打ち込んでいるわけでもない点もご理解いただければありがたいです・・・粗くてすいません・・・


Q再犯率の高さ(40%)に対する現場の考え
A全国を均しすると40%という数値があるが、新潟はそれほど高くないという認識を持っている。
再犯のケースでは、2年以内の再犯が多い。少年院としては2年以内の再犯率を20%以下にしたい。2年間社会で定着して生活できれば再犯率は大きく減少すると言われているため。
A 40%というのは全ての犯罪で再犯者がやっている犯罪の率がそのくらい、という話。 少年院という切り口での再犯率は11%くらい。再犯防止の数値目標として、2年以内の再犯率を2割減らすことが掲げられている。

Q少年院がオープンな環境になり、いろいろな刺激を少年が受けるようになると、彼らがなりたい仕事も多様化するのではないかと思うが、建設業以外の希望職種はあるか?
A美容師に行きたいニーズもあれば、大学進学を目指して起業したいという人もいる。 マッチしていないところはあるという認識は持っている。
学業に注力したいという場合には高卒認定試験をまず推奨することになるが、家庭からの経済的支援などを受けられないために公認試験を頑張って合格してもその先が見えないという課題がある。
奨学金制度はあるが、そこから簡単にお金を借りれないという現実もある。少年院としても安易にお金を借りるということを勧められないという側面はある。どこかに就職して5年、10年務めておカネをためるということが現実的な着地点。
勉強に苦手意識を持っている子は多い。指導として頑張れば克服できると伝えているが、それでもなかなか難しい子もいる。そういう子は建設業でやっていく、という覚悟を決める子もいる。
現場も1年しか見られないので、軽々しく様々な可能性に向かってサポートしていくことは難しい
少年が目標を持ち始めた、関心を持ち始めたということを保護司や保護観察所や協力雇用主と共有して、新しい環境でどうすればいいのかを一緒に考えていくことが重要なのではないかと思う
職業指導のうち、溶接は資格につながるので、それをつかって就職していくというのはあるが、陶芸や木工は直接的に就職に結びつくわけではない。しかし、手順に従ってコツコツやる、という基本姿勢や心構えを養うことが重要だと思っている
社会復帰のための指導という面ではキャリアカウンセラーが定期的に指導をしている。
土方しか道がないという子もいれば、将来IT関係で起業する、という少年もいる。
夢が大きいのは問題ないが、出院後に生活を安定させるための生活設計をどうするか、という軌道修正、微調整はキャリアカウンセラーが個々にやってくれている。
頭がいいけど高校行かないという子が、キャリアカウンセラーの話をきいて大学進学のために勉強し始める子もいる。
職業指導とキャリアカウンセラーのサポートを組み合わせてキャリアデザインを支援している。

Q出院後に希望する職や学校が決まっていない人はどういう特徴があるか、傾向はあるのか。たとえばおれおれ詐欺で大儲けしちゃうと難しいなどの傾向はあるのか
A就学については、出るタイミングと学校に入る時期的なタイミングが噛み合わないケースが結構ある。
もともと居た学校を休学していればその学校に戻れるが、出てから次の4月に向けて試験を受けて進学する場合には、空白の期間が発生する。希望して次年度にいけるように頑張る子も一定数含まれる。
就労「希望」のケースについては、本人希望と親の考え方の齟齬が埋まらないケースなどがある。親は土建関係だと業態的に良くないのではないか、という考えを強く持っている場合、すり合わせるための指導はするものの、決まらないまま出院、というケースも多い。
就労希望して面接の手前で出院というケースもある。保護者との意見の齟齬、タイミングという形で数値的にはこのような数値が出てくるというのが実情
金銭感覚的な部分で言えば、悪いことをしてお金を稼いだ経験(一瞬で数十万、数百万)をしていると、一か月はたらいて15万円、ばからしいという反応をしめす子も多いのが実情である。一般的な金銭感覚を教えていかないと健全な就労意識に向かないというのは感覚的にはある。
一方で、特殊詐欺に関わる子は聞き分けがいい子が多い。H27年度は「すうっと(?)」いっちゃうよね、という現場意識があり、それでよいのか、ということで特別プログラムを用意した。その中で、金銭感覚を養う指導を盛り込んでいる。
プログラムの成果として、リスクを冒して大金を稼ぐよりも、地道に働いて年間このくらい稼げるという正確な認識が養われるということがあるのではないか。

Q財産犯が4割を超えるということで、一見家庭の経済状況や暮らし向きが犯罪に影響を及ぼしているのではないかと考えがちだが、実際には、少年とコミュニケーションを取る中で見いだされる他の要因はあるか?
A詐欺のオリジナルプログラムを作成して指導している。新潟ではグループワークを導入し、7~8人で本音を引き出すという事をやっている。
結局、この種の行為に手を出す少年は、18歳、19歳が非常に多いが、友達が高校に進学した時に、自分は何にもない、特殊詐欺を「仕事」だと表現している。対外的には「仕事」をしている気持ち。いつまでもやるつもりはないが、友達からは「仕事」といえる。
親にはお金はあるのか、という質問に足して、「まあそれなりにあるよ」と繕うためにしているという側面もある。
ある意味で外面も保たれるというところがある。周りが働いているのに自分は金がないのはナー、金があると、周囲と付き合える、というインセンティブ。
受け子はリスクが高いけど、現金がすぐもらえるということで、ある意味選んでやっている側面もあり、大人が「受け子はやらされている」という認識で相対することが間違いという部分もある。
A全国的な傾向でいえば、財産犯に限らず、いわゆるシングルマザーの世帯の少年の割合が高い傾向がうかがわれる。
相対的な貧困の状況にある少年が、親に迷惑をかけず、かつ、周囲とつきあっていくために、犯罪行為をするということはあるかもしれない。

Q日本・イスラエル・アフリカで起業支援をしている。
就職先がないなら自ら起業するということもありなのではないか。
起業支援プログラムを提供したいと思ったときに、どのようにすればできるのか。
Aプログラムは頻度、期間などによって実現可能性は変わる。
希望者がいて、通信教育的な形であれば、導入は可能。
プログラムを施設内で広くやるとなると、各少年院で定めている教育課程との整合性の話になる。少年院全体でやるとなると、法務省との折衝となる。
A少年院は学校ということで、カリキュラムをがっつり入れている。学習指導要領を変えるという話になるので大きな話になる。
A地域の起業家にきてもらって講演というのもやっている。

Q少年院から出て2年間の間で生活に定着していくために必要なものは何か
A親子関係は重要。親との仲が良くないと繋がってこない。あとは交友関係。
出院したところでひっかかるのは不良交友。これがあるとそれが引き金になってしまう。仕事も続かないし、再犯につながってしまうという相談もある。
A帰住地が無い子も多い。職業と住まいが必要。
更生保護施設は職業をあっせんしてくれないので、仕事がすぐに見つからない。
就労先を確保できて身元引受人になってくれるのが重要。引受先があっても保護観察所の調査で、すぐ逃げてしまうという評価のところで折り合いがつかないということもある。求人票がたくさん届いて少年に見せるのだが、求人票をみせて魅力を感じるところってあまりないのが実情。ただ求人票を見て、そこに行こうとは思わない。視覚的に訴えて見られるような仕組みがあれば。
A地元にしがらみがある少年は地元に帰らない方がよい。一番いいのは親が引っ越してくれることだが、それはなかなか難しい。
再犯する少年をみていると、手を染める寸前に駆け込めるような場所があると良いのではないかと思う。出所後に警察署の地域安全課とつながりを作るような仕組みがあっても良いのではないか。
A少年院出院後に電話してくれてもいいし、面会も可能。思いとどまってやばいというときにかけてくれる電話が大事
A出院時に思うことは孤独と不安。院にいるときは職員もいるし、自己効力感もあるが、いざ出ると「自分には何もない」という気持ちになり、不安になるという少年がかなり多い。保護観察官は全国に1500人、保護司はボランティアで5万人。毎年2万人+2千人が保護するというのは現実的ではない。子どもたちが帰る先の地域の受け入れる仕組みづくりが重要

QValubooks社の社員に質問している風景が印象的だった。どういうふうに質問することをエンカレッジしているのか
A普段の日課の中で意見を言う場がある。グループワークもやっている。そういった機会で発言する場を作っている。詐欺以外にも非行内容別に集団指導をしている。
自分の意見を表明し、日との意見を聴くということをやっている。仕事については関心が高い。採用や給与についてはニーズがあるので手が挙がっている印象。

Q少年たちは見学ツアーをどのように捉えているのか
A職員からの説明としては「親や保護司以外の大人が何か手助けできないか、という人が多く見学にきている」ということをそのまま伝えている。少年からの感想は聞いていないが、白い目で見ている人はいないと思う。その意味では心強く感じているのではないか。
A立ち直りや支援を真剣に考えている人が来ているというところで納得できているが、単純に興味関心で来ているようであればやはり反感を持たれる。

Q見学対応の負担をかけているのではないか
A現場レベルでの負担感は全く感じていない。生徒も本音のレベルで感じていない。社会復帰に繋がる部分がある、ということを伝える、彼ら自身が示すチャンスでもあるということを伝えている。むしろありがたいという思いしかない。
A去年も参加した身分としては、視野が広がった。いろいろな業種と話すことができた。同じ環境で勤務すると視野が狭くなってしまうので、こういう考えがあるのか、というのを触れる場があるのはありがたいことだと思う。職員に対する刺激として有用。刺激を受けた職員が指導をするので、少年にその刺激がフィードバックされるので、規模的には小さくないが、対費用効果で言うとメリットがあるように感じている。
Aロジ的な忙しさはあるが、自分達が何をしているのかをしってもらうことが、理解者を増やし、ひいては少年が社会に変えるときに受け入れてくれる素地をつくることに寄与していると確信している。草の根運動に近いが、発信力の高い個人がお集りなので期待している。少年院としても広報という業務として捉えている。いい刺激を受けている。

Q子ども自身の学びの自由度がどれだけあるのか。個々人の興味関心に応じた機会をどれだけ提供できるのか。
A日課の隙間で自分のやりたい勉強ができるのは余暇時間、その時間内であれば本人が希望して差し入れを活用して勉強することは可能
Aインターネット環境は非常に制限が強いのが実情。大量の個人情報が入っており、万が一でもそれが流出していると大変なことになる。新潟学院でも2台しかない。
多摩少年院ではNHK学園のコンテンツのみを閲覧できるという取り組みを始めている。

法務省矯正局山本企画官
少年院は激動の時代を迎えている。少子化により少年院に入ってくる少年が少なくなってきている。法律改正の流れもある。法制審議会で議論をしているが、結果は不透明。
今日本をきれいにしていた少年はほとんどが18歳から19歳。かれらが刑務所にいくのがよいのか、少年院にいくのがいいのかを考えてほしい。

叡智次長
若年者の就労は今後も大事なテーマ。少年院も再犯防止の観点から活動していきたい。
今年から地元の高校生を呼んで、少年期の教育プログラムを紹介している。応募が少ない。若年者の認知も低く、良くないというのが実情なのだろうと思っている。

・・・と、ここまでその場で打ち込んだ内容を書き連ねてきて思うことは、職員の方々ではヒーローではないけれど、支え手としてのリスペクトを持つことは至極妥当な姿勢なのではないか、ということでした。

その弐も近々書きます・・・!

発達障害を抱えた当事者の気持ちを知ることができる良書『人の気持ちが聴こえたら』/ジョン・エルダー・ロビソン

アスペルガー症候群を抱えた米国人男性の治療記。

これまで読んだ本の多くは、どちらかというと精神科医や脳科学者という、治療者あるいは研究者の目線での著作が多かったので、当事者目線で書かれた著作、というのが手に取った理由です。

この本の著者は、発達障害の中でも、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)を抱えています。

ASDは、特に社会的なコミュニケーションや他者とのやり取りがうまくできない、興味関心の偏りといった特徴があります(詳しくは国立精神・神経医療研究センターのページをご覧下さい)。

長年他者とのやり取りで悩みを抱えてきたものの、失敗を重ねながら学習し、集中して取り組むことができた音響エンジニアや自動車修理の分野で成功を収めた著者が、あるとき大学の医学実験に参加することを求められます。

その実験は、頭の特定の部位に電気的な刺激を与えることで、脳内の神経回路の再調整を試みる、というもので、結果として自閉症などの症状が改善する可能性がある、というものでした。

人間関係について悩みを抱えていた著者は、その被験者になることを選び、大学での実験に参加します。

その結果、著者の世界観が大きく変容することを体験する。これまで理解できなかった音楽の歌詞や歌声に込められた思い、会話していて感知できなかった相手の気持ちがわかるようになった。ただ、その一方で著者の生活を支えてきたいくつかのものが失われます。

実験の結果、自分の変化が、決して手放しでオールオッケーということにはならない。
トレードオフの形で得られたものと失ったものがある中で当事者としてどのように感じるのか、という部分が、本書の核心部分です。

発達障害を抱えた人にとって、障害と世間から名付けられた特質を解消し、実態のない「普通」という状態に近づきたいという思いはある。

ただ、その障害が自身の仕事を支えてきたのも事実だし、過去の歴史を振り返ったときに、社会の重要な進歩に貢献した人達の一部は同じような障害を抱えていたとという事も指摘されている。
社会の多様性を担保する上で、自分達のような特徴を備えた人たちが必要なのかもしれない。

障害というシールの貼られた特徴とどのように付き合っていくべきか、著者の決断と根拠、思いなどが明確に記載されており、当事者の置かれた状況や気持ちを理解する上でとても参考になる一冊でした。

子どもの権利条例と豊島区

豊島区が複数の子ども・若者に関わる計画を統合した「(仮称)子ども・若者総合計画」の策定支援をCo-Work-Aとして受託している関係で、 本日は豊島区の豊島区の子どもの権利委員会に出席しています。

豊島区は、2006年に子どもの権利に関する条例を独自に制定しているんですね。
子どもの権利に関わる条例は、子どもの権利条約総合研究所によれば、全国の自治体で制定しているのは44自治体(2016年時点)。
そして、豊島区の条例制定は、全国の自治体の中で9番目(東京都内では目黒区に次いで2番目)ということで、かなり早期に子どもの権利に関わる条例を制定されたことになります。

子どもの権利が危ぶまれているというメディア報道などもしばしば目にする昨今ですが、自治体として子ども・若者の権利を守っていくという取り組みを本腰入れて展開していくという流れの中で、子どもの権利に関わる条例の制定を進めていく、というのも一つの方法なのではないかと思う次第です。

もっとも、条例となると、市民の権利を制限し、義務を課すことにもつながりますし、「条例案の作成・提出→審議→公布」というプロセスを経る必要もあるということで、かなり”力のいる”アクションになります。
条例を制定したからには具体的な事業を組成し展開していくことも求められるので、自治体にとっては覚悟も必要なわけですが、実効性のある活動を行っていく上では有効な選択肢になりうるのではないでしょうか。

豊島区の権利条例は、同じ東京都内の世田谷区の「子ども条例」と比較すると、推進計画の内容をディテールの部分にまで言及する(豊島区計画第7章第30条)など、計画・実行面への配慮のある計画であることが一つの特徴だと思います。

総合計画は、ともすれば総花的で抽象度の高いものになりがちなので、アクションに結びつく部分を条例内で言及して担保しておくことが非常に重要なのではないでしょうか。

コレクティブインパクト型プロジェクトの事例研究~若者の就労マッチングを目指した若者UPプロジェクトのレポート公開~

HBR2月号のタイトルにもなった「コレクティブインパクト」

社会的課題に対して、立場の異なるプレイヤーがボランティアという形ではなく、責任をもって結果にコミットすることで、社会的課題の解決を目指す新しい協働の形

既存文献の中では、海外の事例が引き合いに出されていますが、事業規模や期間のばらつきはあれど、日本国内にもいくつか事例があります。

先月品川のマイクロソフト本社で紹介された「若者UPプロジェクト」もその一つ。

困難を抱える若者が、基本的なITスキルを習得し、円滑な就労に移行することを目指して、
民間企業x民間のNPOx行政
というプレイヤーがそれぞれが強みを発揮できる形で参画し、2010年から2017年まで大きな成果を挙げてきました。

さらに、2018年度からは、その成果と手法が認められ、厚生労働省の政策としてスケールアウトし、今では全国の若者向けの就労支援施設であるサポートステーション(通称サポステ)等で利用可能な制度として定着しています。

ありがたいことに、この取り組みについて当事者の方々にインタビューし、既存論文のフレームを活用しながら若者UPの成功要因について分析したレポートを執筆させていただく機会をいただきました。

社会的課題は、単一の組織で取り組んでも成果を挙げるのが難しく、時間もかかります。一方で、多様なプレイヤーの協働による取り組みは、理想的ではありますが、その分意思疎通やコンセンサスの形成、中長期的な関わりが大事になってきます。

若者UPというプロジェクトを取り上げながら、現場の当事者の考えや動きも織り交ぜてリアリティも残しながら紹介しています。社会的課題の解決を目指す多くの方々の参考になれば幸いです。

「わかりやすさ」と「わかったつもり」

池上彰氏の「わかりやすさの罠」を読んでいます。

帯の顔のアップ具合が、池上さんの知名度の高さをよく表していますね。ニュースをわかりやすく伝えるという意味で池上さんは日本でもトップクラスのキャスターなんじゃないでしょうか。

本書のタイトルにもなっている「わかりやすさの罠」

子ども・若者支援に携わっていると少なからず感じるところです。

問えば、幼児虐待の悲惨なニュースが報道されれば、社会は、親に対する熾烈な批判で埋め尽くされます。
非行少年の起こしたアクシデントや犯罪が起これば犯罪者は一方的に糾弾されます

でも、少し立ち止まって
「100-0」で親が悪いのだろうか?
犯罪を犯したことは確かに悪いことだが、なぜ彼はその犯罪に手を染めたのか?

という疑問一つ立てることができれば、単純に両親が、罪を犯した本人だけに原因を求めることの違和感を持つことは可能なはずです。

表面的なニュースを視覚的にスクロールして、「毒親」「悪人」という書き込みに「いいね」の親指が立ちまくる状況を見ていると、そういう違和感を持つ人がどんどん少なくなっているのではないか、と思う事がままあります。

池上さんのわかりやすさの価値は

「複数の事実が複雑に関係しあった情報の塊の一部を切り出して、そこの解像度を高めてくれている」

点にあるのであって

「複数の事実が複雑にあ関係しあった情報の塊」

をみせてくれているわけではないかもしれない、ということに気づく必要がある。

わかりやすい”断片”を見て、それがわかりやすい”全体”だと認識してしまうことが、「わかりやすさの罠」なんじゃないでしょうか。

だからこそ、池上さんのニュース番組を見て、全てが「わかったつもり」になるのは危険だと、同氏は警鐘を鳴らしているのだと思う。

時間があり、考える余裕もあれば、自分の目の前に突き付けられているニュースが誰かの編集を経て拵えられているのだから、他の情報と突き合わせてみなければならない、その余裕もなければ少なくともそのニュースが物事の全体だと錯覚したり、事実と完全に一致するという判断はしないでおこうとも思える。

その余裕が日本ではなかなか取れないのかもしれないですね。

さて本書ではその他、キャスターとアナウンサーの違いや、週末のニュースバラエティに出てくる巨大フリップ形式の見出しの位置づけとか、メディアに関わる方ならではのトリビアも散りばめてあります。

読んだ後テレビ番組見たら、見方が変わってると思う。

本家だけあって文章はシンプルでわかりやすく、かつ、伝えたいことのコアの部分が失われていない良書でした。

若年無業経験者の規模感を線的に把握することで見えてくるもの

育て上げネットでは様々な統計データ等を用いながら、子ども・若者の置かれた状況に関する分析や考察を継続的に行っています。

子ども・若者領域のNPOとして、ここまで精緻な分析を行っている事業者は、他にはちょっといないんじゃないかな。

ともすれば定性的な成果が掲げられがちなこの業界において、育て上げネットのように、定量的な把握を重視する姿勢というのは、非常に稀有だし、重要な取り組みだと思います。

さて、最新のリリースで提示されたのが、若年無業者の人数。

このリリースの特徴は、ある時点での若年無業者の人数という「点」としてのデータだけでなく、一定期間中に若年無業状態にあった若者の人数(概念としては述べ人数に近い)を推算しているところにあると思います。

2019年2月1日に発表された「労働力調査(基本集計) 平成30年(2018年)平均(速報)結果」をベースにして、

  • 15歳~39歳
  • 非労働力人口(就業者、完全失業者以外)のうち、家事も通学もしていない

という条件に合致する人を抽出したところ、71万人という分析結果が得られた、というのが、2018年12月31日時点で若年無業者だった人数という「点」としての示唆。

そこから、労働力調査が同世帯に対して2か月連続でやっているということを利用して、まずは15~34歳の若年無業経験者数を推計し、それを15~39歳まで引き延ばしたところ、年間で若年無業状態を経験した人は180万人程度いるのではないか、という結果を提示している。

もっとも、この180万人の中には、複数回、若年無業と非無業の状態を行き来している人が含まれている可能性があるので、正確に言うと、延べ人数ということになるが、それでも、71万人という数値と180万人という数値とでは持つ意味も、規模感も全く異なってくる。

平均して2%が若年無業状態であり
年間を通じて5%が若年無業状態を経験している

という2つのデータをセットで認識しておくと、若者の実情のより良い理解につながるのではないだろうか。

愛知県知多市の地域で支える就労支援

昨日は愛知県知多市が開催する「若者就労支援フォーラム2019」にお招きいただき、各地の若者就労支援の取り組みについて、というタイトルで講演の機会をいただきました。

知多市には「ちた子ども若者支援ネット」という、行政機関やNPO、民間企業が参加する中間的就労を支援するネットワーク組織があります。社会福祉協議会がネットワークの事務局機能を担っているということでしたが、この社会福祉協議会のスタッフの方々が素晴らしい方だったのが印象に残っています。

福岡県北九州市の総合相談センターのYELLや、東京都文京区のフミコム、そして知多市の子若ネットといった活発に活動を続けているネットワークの共通の特徴としては、ハブとしての社協がしっかりしている、というところですね。
社会福祉協議会の役割や活動についてはこちら↓

さて、知多市の取り組みは前々から大変興味深く拝見しており、いつか現地でその活動を支えている方々にお会いしたいと思っていたところに、今回のようなお誘いをいただいたのは非常にありがたかったですね。

知多市では、中間的就労の促進ということで、このネットワークの活動が非常に特徴的なのです。

何が特徴的かというと、就労体験の場を、その地域で事業をされているさまざまな企業と連携することで提供しているというところにあります。

ちた子若ネットでは、平成28年に、15歳から39歳までのニート、ひきこもり状態にあり、障害福祉サービスを利用していない方を対象として、中間就労準備支援、企業開拓、人材発掘・育成を試験的に実施しています。

同時に、知多市商工会を通じて、市内事業者約1000社を対象にして、「若者の中間就労に関するアンケート調査」を実施、ヒアリングを経て約30社から中間就労体験の場を提供してもよい、という事業協力を取り付けています(ちなみに、平成30年時点では48社に拡大)

その上で、22歳から38歳までの男女8名が、製造業など6事業所で就労を体験し、うち2名が市内事業所に正社員として採用されたということです。

非常に参考になるのは、上記の調査および体験就労支援のコスト負担を、地元のライオンズクラブやロータリークラブの寄付によって賄っているということです。

こういった活動を展開する場合、行政による助成金や事業受託によって賄おうとするケースは非常に多いのですが、知多子若ネットではその道を選ばず、地元の他のネットワーク組織にアプローチしたという意思決定をしている。

資金調達ルートを多様化するとともに、自ネットワークの認知度向上やプレイヤーの巻き込みといった様々な面で、このトライはいい影響を及ぼしたのではないかと思います。

知多市は大都市である名古屋から電車で30分ほど。多くの若者が名古屋に働きに行く中で、中間的就労の場を設けて、就労を希望する若者と地元企業をつなげる接点を作ることは、地域福祉という観点だけでなく、まちづくり・地域経営という観点からも重要なのではないかと思います。

一方で、課題として挙げられていたのは、集客(=参加者を増やすこと)と、参画企業との関係維持というところにあるということでした。

岡山県勝央町でも同様の取り組みを進められていますが、こちらも参加者がいないということが課題になっています。

良い仕組みを作っても、それが使われなければ意味がありません。
広報や情報発信のテコ入れ、あるいは利用可能なターゲットの拡大といったところが正攻法的な打ち手として考えられるのではないでしょうか。

また、参画企業の関係構築としては、年1回程度、活動報告を訪問して行ったり、あるいは、今の若者の就労に関する意識や考え方を伝えるといったことも有効かもしれません。企業にとって、どのような会社であることが、若者にとって魅力的に映るのかは、なかなかノウハウの蓄積がない分野のひとつです。

現場で若者と接点を持っているからこそ持てる気づきや学びを子若ネットから提供することができれば、企業が参画するインセンティブになりうるのではないでしょうか。

社会福祉法人という民間事業者としての活動の幅広さと柔軟性を活かして、今後の活動展開にまい進していけるとよいのではないかと思います。