目下、読み進んでいるフレデリック・ラルーの「ティール組織」で取り上げられているオランダの在宅医療事業者のビュートゾルフの事例が興味深いです
2006年に設立され、7年後の2013年には従業員が10人から7000人にまで拡大し、オランダの在宅医療看護師の3分の2を雇用するまでになった同社
急拡大を遂げた組織にありがちな従業員の満足度の低下とも無縁で、病気理由の欠勤率は同業他社と比較して60%低く、離職率も35%低く、組織の拡大と働き甲斐を両立させています。
さらには、サービス提供を受けた顧客一人当たりの介護時間は他の比較して40%短く、緊急入院は3分の2、平均入院時間も短いという成果まで挙げているという凄さ。
組織の拡大と、メンバーの活力の維持、顧客満足の3つを満たす組織の運営とはどのようなものなのか・・・
詳細は本書の紹介に譲るとして、ビュートゾルフが成功した一番の要因は、サービスを担う看護師の自尊心や使命感を仕事を通じて感じられる環境を提供したこと、なのではないかと思います。
本社の機能を極力まで小さくする一方で、現場の看護師チームの裁量を大きくする。担当する患者を誰にするか、どんなサービスを提供するか、年間の計画策定から日々の業務管理からオフィスの場所決め、採用・育成計画、チーム内のコミュニケーションの在り方まで、ほとんどありとあらゆることをチームは決めてよいということになっている。
その一方で、チームが大きな裁量を前にして茫然としたり、暴走しないように、ツール、研修、指導などの環境を提供する。上司・マネージャーではなくコーチが支援することでチームの問題解決力を高める、とういった工夫をする。
ただ自由にやっていいということになると、そこに自信をもって参加できるのは一部の熟練した専門家だけになってしまいます。そして熟練度によるチームの階層化が進むとそれは職務の縦割化につながっていく、という硬直した組織に進まない工夫がビュートゾルフには実装されているように感じます。
さて、このビュートゾルフの事例、子ども・若者支援地域協議会の活動にとって非常に参照性が高い事例と言えるのではないでしょうか。
子ども・若者支援地域協議会は様々な強みを持った支援機関の実務者が職位の高低に関係なく対等に、地域内の困難に直面した子ども・若者を支援するために立ち上げられたチームです。
協議会を統制する組織はなく(内閣府が事業を職掌してますが、本社機能ともいえる機能は極小と言えます)、ただ調整機関としての事務局があるのみです。
各協議会の活動は地域の実情に応じて、政府が設定する協議会組織としてはかなり自由度の高い運営が可能です。
一方で、自由度の高い運営をするためのツール・研修・コーチなどの整備はまだまだと言わざるを得ませんが、各地域のノウハウや事例を持ち寄っていくことで自然発生的・ボトムアップ的に構築されてきているのが現状であると田中は認識しています。
ビュートゾルフでは、支援者の自尊心と使命感の喚起、維持が事業展開のキモでした。
同社と同じく、子ども・若者支援地域協議会の運営においても、参加する支援者や非専門家である生活者の方々のハートをパチパチと焚き続けることが大事なのではないでしょうか。
ちなみにビュートゾルフ社はフランチャイズ形式で日本進出もしているようですね→同社日本法人のウェブサイトへ