【読了】この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。/小林エリコ

しあわせは 歩いてこない だから歩いて ゆくんだね
一日一歩 三日で三歩
三歩進んで 二歩さがる

だったらいいですけども。

実際には
一歩進んで一歩下がる
また一歩進んで一歩下がる
一歩下がるたびに削れていく体力と自己肯定感、醸される無力感と自己嫌悪
それでも両手で囲って踏み消されないように残った心の灯その一灯を元手に
次の一歩を何とか進んで、そこで何とか踏みとどまる
って感じだと思います。

物語は月給12万円・社会保険なし・残業代なしのブラック企業(しかもエロ漫画編集が仕事)の著者が398円のコンソメを万引きするところから始まる。
そこから自殺未遂、精神科通い、生活保護という経験を経て、再び編集者という仕事を再開して、徐々に自分の生活を取り戻していくまでのお話。

その過程で著者を支えたのは、家族、生活保護制度、支援者、どれも著者が生きていく上で必要な存在だけれども、これらの支えは良し悪しない交ぜに描かれているように思える
著者が前向きになれたのは、そういった家族とか支援者とか特定少数の人との濃い関係よりもむしろ、社会から必要とされていたり、同僚や仕事関係の人との関係のような、不特定多数の薄い関係の積み重なりだったのではなかろうか。

過去の自分も含め、苦しい立場に追い込まれた多くの知り合いは、自分を閉じてしまう。でもそれが実は負のスパイラルに自分を追い込むことになる。
そうならないために、社会の中で自分の立ち位置を定位できるようないろいろな関係を築くことが大事なのではないだろうか。

この国の生活保護世帯の自殺率は、それ以外の世帯の自殺率と比較して2倍も高い。人を孤独に追いやる代償はとても大きい。

 

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