支援の輪を広げるNPO法人PIECESの挑戦

先月行われた内閣府の青少年問題調査研究会でプレゼンした4つの総合相談センターの担当者の方々が、地域の生活者との連携という点に注目しているのが印象的でした。

子ども・若者を支援していく上で、専門性を持った支援機関の存在はとても重要ですが、支援機関だけでは地域内で困難に直面する子ども・若者を見つけて支援し切ることは難しいのも現実です。当事者と専門家とのギャップを埋めるためには、非専門家―地域の生活者―の参加と協力が不可欠だと感じます。

足立区と豊島区をメインに、子ども・若者支援に取り組むNPO法人PIECESも、地域の生活者との連携を活用している団体だと思ってます。

あ、なんでPIECESの話がいきなり出てきたのか、といいますと、副代表の荒井さんと打ち合わせのため、オフィス初訪問してきたのでした。

PIECES のオフィスは東京都文京区の後楽園駅から少し歩いたところにあるビルの一室に立地しています。

なんか秘密基地みたいな雰囲気ですね。シェア形式で入居している事業者の1つが建築設計を手掛けたそうです。

月曜日の昼前に伺いましたが、誰もおらず。皆さん現場に出ていて忙しいのか、はたまた夜型なのかはわかりませんが、夜の方が確かに居心地はよさそうだ・・・(笑)

PIECESはCYW(コミュニティユースワーカー)という形で、地域の子ども・若者を支援する支援員を養成しています。同団体のウェブサイトのメッセージを借りるとCYWとは

「孤立している子ども達と出会い、一緒に遊んだり、ご飯を食べたりしながら、ゆっくり信頼関係を築いていく親でも先生でもない大人」

という存在のようです。近所のちょっと年上の(飲み物とかおごってくれるくらいの)お兄さん・お姉さん、あるいはおじさん・おばさんって感じでしょうか。

名古屋市の総合相談センターにおける「よりそいサポーター」にも通じる支援者像だと思います。二つの団体の取組みで似ているのは、

  • ともに非専門家である地域の生活者を大事な支援者として認識していること
  • 当事者とのマッチングに工夫をしていること
  • 非専門家としての良さを発揮してもらうために、教育(研修)が必要と考えていること

の2点でしょうか。もう少しお話を聞けば、研修内容の類似性なども出てくるかもしれませんが。

ともあれ、地域の中に、もっと子ども・若者と関わりたいと思っても、自分が何ができるかわからない、と思っている人は少なくないと思います。そういった潜在的な支援リソースをうまく支援の場に引っ張り上げるのが、二つの組織とも巧みだなあと感じました。

その他、PIECESは地域に根差した企業との連携もいろいろと進めていて、去年には、ゲーム会社と連携して、ゲームやプログラミングに興味がある子ども・若者とゲーム会社の社員が協働してゲーム作りを体験できる「PIECESクリエイティブガレージ」をオープンしています。


荒井さん曰く、この活動に参加した不登校の生徒の実に9割が不登校状態から回復し、就労意欲や就職といったことにも興味をもって、デジタルハリウッド大学に進学した子もいるそうです。

デバッグ業務に不登校やひきこもり、発達障害携行のある当事者を採用して著しい業績を上げているデジタルハーツにも通じる試みですが、当事者がどのようなことに興味関心を持っているのかを把握して、それが発揮できるような環境を提供してあげることが、支援の重要なポイントなのではないでしょうか。

特にITやゲーム業界は支援の中核を担う専門機関にとって縁遠い業界であるのがボトルネックではありますが、こういったところとPIECESのようなNPOが楔となって連携することができれば、新しい支援の可能性が開けてくるのではないかと思います。

PIECESは今後も地域のネットワークの拡充にむけて取り組んでいくそうで、これからさらに色々な取り組みが生まれてくると思います。個性的な4名のメンバーが打ち出す次の試みは何なのか。期待が高まりますね。

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