【本】世界はもっと美しくなる

 エクセルシオールカフェで読んではいけない一冊だった…(涙)

奈良少年刑務所に収監されている人がつくった詩の詩集、読了です。いや、当たり前ですが、こういう本もあるんだなあと。

奈良少年刑務所で行われている「社会性涵養プログラム」の一環で行われている「物語の授業」で、受刑者がつくった詩が紹介されています。

視界がぼやけること二度三度、人前で涙するのは何とかこらえたものの、危なかった…苦笑

いまどき詩作かよ、という話かもしれませんが、このプログラムは刑務所で9年間も続けられていた(いた、というのは奈良少年刑務所は2017年で廃庁になったため)ことから、現場目線でも効果が認識されていたことがうかがえます。

9年も続いた理由は、編者の寮美千子氏が前書き部分で言及しているように、詩作と朗読によって、受刑者の心の扉が開いた後に彼らが持つやさしさが驚くほどに表れ出たからなのではないかと思います。
実際に紹介された作品も、他者との絆や、家族への感謝や愛情を扱ったものがたくさん出てきます。一方で、彼らが生きてきた日々がどれだけ過酷なものだったのかを吐露した作品も多く、複雑な気持ちになります。

罪を犯した人が犯した罪を悔い改めて償っていくことはもちろん重要なんだけれども、償うためには彼らが社会で生きていくことを許容する社会でなければならないわけです。
それに、彼らの作品を読んでいると、彼らをして犯罪に走らせたのは一体誰なのか、何なのか・・・

ちなみに、巻末に紹介されているプログラムの進め方は、ワークショップにおけるダイアログのセットアップ方法と驚くほどに類似していて、実務的な参照性も高いというすばらしい一冊となっております。おススメ。

(←画像クリックでAmazonに飛びます)

【本】少年院のかたち

『殺人をやって「自分が死ねばいいですから」という少年もいます。「死んだら簡単だよ」と叱ります。
「被害者は苦しいよな。おまえも苦しめよ。なにを苦しむんだ?」
「償いと簡単に言うな」
「ここにいる時は俺も一緒に背負う。だけど社会に出たら、おまえはどう背負う」
それらしい謝罪と作文で終わり、というわけにはいきません。
それもやらないと法務教官じゃないですからね。』

いまお手伝いしている仕事のうちの一つが、少年院に関わるものなのですが、そもそも少年院ってどんなところなのか、そこに入院している少年はどういう人なのか、さらには、そこで矯正教育を担う教官はどんな人たちなのか。

知るということは大事なことだと思うんですよね
それを知っているか、知っていないかで自分の見方は大きく変わります

少年院に収監される人は自分たちとは違う、と思った瞬間にそこは見なくてもよい領域になってしまう、その頭の動きが危険です。関わりはなくても、知ってるのと知らないのとでは出てくる考えは大きく変わるので。

(←クリックでAmazonにとびます。)

イノベーションのルーティン

『イノベーションの成否を分けるのは、単調な骨折り仕事をマスターできるかどうかだ。
創造のプロセスは通常は輝くようなアイデアから始まる。
このすばらしいアイデアに見込みがあれば、次にはビジネスの見地から見て進める価値があるかどうかを決定する。
このあたりは心躍る部分だ。知的には恐らく最も刺激的であろうが、同時に比較的容易な部分でもある。

続いて、そのアイデアを実行段階に引きおろすという現実的な仕事が来る。
これがイノベーションの中で最も単調な部分であり、人々に対するプレッシャーや鼓舞のほとんどはここで必要になる。

Diamond ハーバードビジネス 1990.7.』

そう。そうなんですよね。
イノベーションは飛躍、破壊的な新しい価値がすごいスピードで広がっていく、というイメージが持たれているんですが、実は中盤からルーティン作業が山のように現れてきて、そこに埋没しなければならない時が必ず来る。

イノベーションのイメージとは真逆の活動なんですけど、成功しているイノベーションチームは何のことはない、このフェイズですらすごいスピードでやり進め、はたから見たら飛躍的なスピードで成長してるように見えているだけなんですよね。

最澄とU理論

平安時代の仏教て、今の社会にとっての「科学」みたいな、非常に重要な位置づけだっただろうから、僧侶は超ざっくし言うと科学者みたいなもんだと思う。

そう考えると、さしずめ最澄と空海はジョブズとベゾスって感じでしょうか。それぞれすごいイノベーターだと思うわけです。

で、特に最澄について書かれた梅原猛氏の『最澄と空海』で読み進めていくと、最澄の人生はオットー・シャーマーのU理論の道筋に驚くほど当てはまるのが面白い。
“最澄とU理論” の続きを読む

支援の輪を広げるNPO法人PIECESの挑戦

先月行われた内閣府の青少年問題調査研究会でプレゼンした4つの総合相談センターの担当者の方々が、地域の生活者との連携という点に注目しているのが印象的でした。

子ども・若者を支援していく上で、専門性を持った支援機関の存在はとても重要ですが、支援機関だけでは地域内で困難に直面する子ども・若者を見つけて支援し切ることは難しいのも現実です。当事者と専門家とのギャップを埋めるためには、非専門家―地域の生活者―の参加と協力が不可欠だと感じます。

足立区と豊島区をメインに、子ども・若者支援に取り組むNPO法人PIECESも、地域の生活者との連携を活用している団体だと思ってます。

あ、なんでPIECESの話がいきなり出てきたのか、といいますと、副代表の荒井さんと打ち合わせのため、オフィス初訪問してきたのでした。 “支援の輪を広げるNPO法人PIECESの挑戦” の続きを読む

LINE相談を運用していくための3つの課題

育て上げネットは、厚生労働省の自殺対策の一環として試験的に開始されたSNSによる相談を行う団体として指定をされており、現在進行形で対応を始めています→参照ページ(厚労省)

田中は後発組ながら支援の一端を担うべく、本日研修を受けてきました。一日のうち、午前が座学、午後がケースを用いた模擬対応に参加してきました。 “LINE相談を運用していくための3つの課題” の続きを読む

専門家集団ごとにサイロ化した組織を再構築したCleveland Clinicの顧客志向経営

US News & Worlds reportの米国内患者満足度調査において、長期にわたってトップを維持しているオハイオ州のCleveland Clinic
ちなみに2006年は同調査で最下位でした

10年ほどで同病院が劇的に評価を高めた背景には、医者視点の組織構造を転換して、患者の体験を起点にしてつくり変えたことが背景にあることは、2年前に出版された『サイロ・エフェクト』でも紹介されていました。 “専門家集団ごとにサイロ化した組織を再構築したCleveland Clinicの顧客志向経営” の続きを読む

偶発性の心づもり(稲盛氏のワックス)

ニュートンは木からリンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を思いついた、という話は有名ですが、京セラ創業者の稲盛和夫氏が研究室のワックスにつまずいてファインセラミックスの製法を思いついた、という話はそれほど知られていない “偶発性の心づもり(稲盛氏のワックス)” の続きを読む

稲盛和夫氏と梅原猛氏の考える事業の一丁目一番地

ティール組織やオットー・シャーマーの『U理論』、ミハイ・チクセントミハイの『フロー』、A.H.マズローの『人間性の心理学』なんかには共通点があるなあ、という呟きをFacebook上に投げたら、ティール組織のイベントを企画されたICJの吉沢さんや、GOBの櫻井亮さんからいろいろと示唆や参考になる本を紹介いただいたので、ちょっとずつ読んでます

櫻井さんから紹介いただいた梅原猛先生の本の中から、まずはとっつきやすそうな『近代文明はなぜ限界なのか』を読了。

“稲盛和夫氏と梅原猛氏の考える事業の一丁目一番地” の続きを読む